11月23日
「挽いたコーヒー豆は冷凍庫で保管する」ということを知ったおかげでコーヒーが美味い。“フライパンの蓋”というものを手に入れ、目玉焼きが上手に出来るようになったおかげで、ベーコンエッグにはまる。そんな充実の一週間を過ごしているうちに、『ROOT&UNITED』のチケット先行抽選受付締め切りが迫っていた。明日24日の23:59まで。おおお。迫っている。20回目の今回は、とてもおめでたいので『ROOT&UNITED SPECIAL』ということにして、SCOOBIE DOとRHYMESTERともう一バンド、大人気の四人組を迎えて行うことにしているのだ。君には、TIME&MONEY&SOULをなんとかやりくりしてもらって、なんとしても来て欲しい、と思っているのだ。絶対に最高の日になる。それだけが分かっている。
『ROOT&UNITED』は2004年から始まったライブパーティーイベントである。『Beautiful Days』というアルバムのリリースツアーが東京、大阪の二カ所限定となってしまったこともあり、2004年の夏も過ぎ去ろうとしている時期には、「ライブハウスでライブをバキバキやっていきたい」モードになってしまった俺達。そんな俺達に、当時の所属レーベル担当ディレクターは「ライブの現場でカッコいいSCOOBIE DOをアピールする」、「CDをリリースすること以外での話題作り」という、言葉にすればなんとも垢抜けない、しかしロックしてロールしていくためには何にも間違っていないコンセプトを形にした自主イベントの開催をすすめてくれたのだった。
そう、俺達はやるしかなかった。
その頃、“生音のFUNK”にこだわりつつあった俺達にとって、代官山のハコ、DJも入れた深夜イベント、というやり方はそのこだわりが花開くためにこの上なく最適な方法に思えた。かくして、2004年9月、試験的に行われたvol.0を経て、2005年の1月21日にvol.1開催。対バンはラテンバンドのCENTRAL、そしてTUCKER。恒例のセッションもここから行われる。その後、「互いのルーツを辿りながら、今、この場所でしかありえないレアなセッションを、ライブハウスに来ることを揺るぎない楽しみとしている君にみせたい!」という強い気持ちが生まれてしまったことをきっかけに、vol.5から夜開催へ移行。そうして、それから。SCOOBIE DO×対バン×山名昇氏×君@代官山UNITというスタイルは変わることなく、今に至る。のである。対バンを振り返る。
vol.0 w/The ZOOT16
vol.1 w/CENTRAL、TUCKER
vol.2 w/犬式
vol.3 w/RHYMESTER
(vol.4は欠番)
vol.5 w/ZAZENBOYS
vol.6 w/bonobos、Romancrew
vol.7 w/The Miceteeth
vol.8 w/FIREBALL
vol.9 w/オーサカ=モノレール
vol.10 w/マボロシ
vol.11 w/YOUR SONG IS GOOD
vol.12 w/曽我部恵一バンド
vol.13 w/riddim saunter
vol.14 w/サンボマスター
vol.15 w/SOIL&“PIMP”SESSIONS
vol.16 w/GOING UNDERGROUND
vol.17 w/レキシ
vol.18 w/the telephones
vol.19 w/スチャダラパー
(2013.11/28 記し忘れていたので追記。この他、vol.15と16の間に『ROOT&UNITED』出張版の『ROOT&UNITED Revue』が行われた。2011年4月、京都MUSE、名古屋CLUB UPSETにてw/riddim saunter、同年5月、札幌にてw/アナログフィッシュ。恒例のセッションも行われ、代官山でのパーティーに負けず劣らずの素晴らしい夜となった。山名昇氏のDJも大好評で、それも嬉しかった。以上、記し忘れていたこと、教えてくれてありがとう)
ひとつひとつの夜を語ってみることは出来るだろう。が。今はあえてこう羅列してみることで感じる熱さにやられていたい。自分達のルーツにこだわり、敬意をはらいながら、自分達にしか出来ない音楽を鳴らすことを決意し、その音楽で“今”が最高を叫ぶ。そんなバンド、グループばかり。ばかりが並んでいる。こんなイベントになって良かった。こういう筋の通ったイベントになって良かった。「ライブの現場でカッコいいSCOOBIE DOをアピールする」、「CDをリリースすること以外での話題作り」という当初のコンセプトはいまやどうでも、いや、どうでもってことはないけれど、そういうことの他に心が満たされる瞬間がたくさんあった。今年の4月、vol.19でのセッションは、SCOOBIE DOの『PLUS ONE MORE』と、スチャダラパーのデビューアルバムにおさめられている『スチャダラパーのテーマ PART.2』を生マッシュアップするという試みであった。なかなか無茶なアイデアのようにも思えたが、演奏は思いのほか上手くいった。そしてなにより、その場で初めて披露されたこのセッションでフロアが躊躇無くFUNKしている様子が想像を遥かに超えていた。その感じがとてつもなくカッコよかった。カッコよかったことが嬉しかった。後日、そのセッションがとても素晴らしく楽しかったと伝えてくれた人達がいた。その日その場限りの音楽そのものを楽しんでくれたことがこれまた嬉しかった。
あの日の夜を振り返り、そして、昔へ昔へひとつづつ順にさかのぼり思い出し、「“今”を楽しむ心意気」こそが『ROOT&UNITED』というイベントそのものなのだ、と確信して、vol.0の開催を前にした俺の心の中までたどり着けば、その心意気はまだ産声をあげていなかった。そして再び戻る今現在。その心意気が生き生きと脈打つ胸の内を感じてみれば、この19回の夜達は(そして、もちろんRevueの夜達も)、たとえ風の中に消えてしまったとしても、俺の心の中に全て突き刺さり埋め込まれ、つまり、残り続ける。改めて、『ROOT&UNITED』(もちろんRevue含む)=出演してくれた全てのバンド、グループ、DJ、その場所に来てくれた君、山名氏、UNIT、に感謝したい。本当に、ありがとう。
20回目の夜も、今を楽しむ心意気で満たされた夜になると確信している。今回共演のRHYMESTERは二度目の出演。2005年、vol.3でのライブセッション後、ステージを降りながら興奮気味に「バンドと一緒にやってこんなに盛り上がったの初めてだなぁ!」と言ってくれたあの場面はいまだに俺の中で鮮明なままだ。2008年、vol.10でのマボロシとの共演時、打ち上げの席で「今日のセッションのブッツケ本番っぷりは俺の歴史の中でも1,2を争うなぁ。イカしたセッションだったよ」とほろ酔いのMummy-D氏が打ち明けてくれたことも、やはりとてつもなくE思い出。そして、今回の『SPECIAL』はもう一バンド。『ROOT&UNITED』初登場となる、あの四人組バンドが加わるんだから、どうなっちまうんだろうか。うん、どうなってもよいやネ。「“今”が最高!」な現場になることは間違いないんだから。起きることは全て楽しんでやろうと今から当日の自分に発破をかける俺なんである。
毎回来ているという君も、行ったことがあるという君も、一度も行ったことが無いという君も、是非ともこの『ROOT&UNITED SPECIAL』に来て欲しい。この日はド派手で、めでたいお祭りにしたいと思っているのだよ。「今を楽しむ君の心意気」はきっとお祭りをよりド派手に、よりめでたくすると思うのである。何が起こるかは分からない。でも、絶対に最高の日になる。それだけが分かっている。
3月30日。楽しみだな。
それまでにはきっと、更に美味いベーコンエッグを作れるようになっているに違いない。
それも楽しみ。
コヤマシュウ